生成AIを活用したSaaS(AI SaaS)は、限られた経営資源で競争力を高める強力なツールですが、以下のような悩みによって導入や活用に踏み出せずにいる方も少なくありません。
「具体的なROIが見えず、AI SaaSどのサービスを選べば良いか分からない」
「自社の業務や組織にフィットするのか、どう導入を進めれば良いか見通せない」
そこで今回は、AI SaaSの選び方やメリット・デメリット、代表的なサービスを解説します。
【記事を読んで得られること】
- 自社にAI SaaSを導入すべきか判断できる
- どのAI SaaSサービスを選ぶべきか分かる
- 導入のタイミングや進め方をどう設計するか分かる
AI SaaSを導入する際の注意点も解説しているので、ぜひ参考にしてください。
生成AIを活用したSaaSとは

生成AIを組み込んだSaaSは、人が行っていた業務の工程をAIに置き換え、業務フローそのものを再設計できるサービスです。
SaaS(Software as a Service)は、インターネット経由で利用できるソフトウェアサービスです。アカウントさえあれば、オフィスや自宅、出張先など場所を問わず利用できます。従来は「インストール不要で使える便利なツール」として広まってきましたが、AI技術の進化により、SaaSの役割は大きく変わりつつあるでしょう。
特に、生成AIやAIエージェントの登場により、SaaSは単なる業務支援ツールから、判断・提案・実行まで担う業務最適化の実行支援プラットフォームへと進化しています。たとえば、ChatGPTやClaude、GoogleのGeminiといった生成AIを組み込んだSaaSでは、営業メールの自動作成、議事録の自動要約、コードの自動生成といった高度な業務を自動化・支援できるようになりました。
生成AIを活用したSaaSの導入により、日常業務の省力化だけでなく情報収集からアウトプット作成にかかる時間を短縮し、従業員が創造的・戦略的なタスクに集中できる業務環境を整えられるでしょう。今後も生成AIを活用したSaaSは、業務のあり方を大きく変える存在として多くの業界で導入が進むと考えられます。
生成AIを活用したSaaSサービスを選ぶ5つのポイント

ここでは、生成AIを活用したSaaSサービスを選ぶポイントを5つ紹介します。
- 解決したい業務課題を明確にする
- 必要な機能が搭載されているか確認する
- 費用対効果が納得いくか検討する
- 自社の業務にフィットしているか確認する
- セキュリティ対策は十分か確認する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
解決したい業務課題を明確にする
自社の業務課題を明確にすることで、最適な生成AI SaaSを選定できます。
目的が不明確なまま導入を進めてしまうと、期待通りの効果が得られない可能性があるでしょう。
「議事録作成の時間を短縮したい」「社内問い合わせ対応を自動化したい」といった具体的な課題を定義すれば、適した機能を持つサービスを絞り込みやすくなります。
必要な機能が搭載されているか確認する
業務課題を解決するために必要な機能がSaaSに備わっているかを細かくチェックしましょう。
サービスごとに搭載機能や料金体系に違いがあるため、目的と合致しないものを選んでしまうと効率化の効果が薄れてしまいます。
また、導入後にカスタマイズが必要となる場合は、AIに関する知見を持った外部支援の有無も合わせて確認しておくと安心です。
費用対効果が納得いくか検討する
SaaSの継続利用にはコストがかかるため、投資対効果(ROI)の視点で評価する必要があります。
提供される機能が料金に見合っているかを検証し、必要以上に高額なサービスを選ばないよう注意しましょう。
近年では「成果連動型」や「価値ベース課金」など柔軟な料金体系を採用しているサービスもあるため、業務改善の効果と費用のバランスを見ながら比較検討するのがおすすめです。
自社の業務にフィットしているか確認する
生成AI SaaSが自社の業種・業態に対応しているかは、導入効果を左右する重要な要素です。
特定業界向けに最適化されたツールであれば、現場の業務に自然に組み込みやすく、スムーズな定着が期待できます。
たとえば医療、製造、不動産など業界固有の専門用語やワークフローへの対応可否も確認しましょう。既存業務への適合性を踏まえて、必要に応じてカスタマイズ性も検討材料としてください。
セキュリティ対策は十分か確認する
AI SaaSに機密性の高い情報を扱わせる場合、セキュリティ対策のレベルは最重要項目です。
ツール選定時には、データ暗号化の有無、アクセス権限の制御、第三者認証の取得状況(ISO/IEC 27001など)をチェックしましょう。また、クラウド上に保存されるデータの取り扱いポリシーや、データ連携時の安全性も見落としてはいけません。
特に、部門ごとに異なるSaaSを使用している場合は、情報の一元管理ができるかどうかも判断基準の一つとなります。
生成AIを活用したSaaSサービス10選

ここでは、生成AIを活用したSaaSサービスを10個紹介します。
- Salesforce Einstein
- Mazrica Sales(旧Senses)
- Jasper
- ChatPlus
- SUZAKU
- GitHub Copilot
- LegalForce
- Adobe Firefly
- Canva
- Notion AI
それぞれ詳しく見ていきましょう。
Salesforce Einstein
Salesforce Einsteinは、世界No.1 CRMであるSalesforceに搭載されたAI機能群です。2014年にAI研究所を設立し、2016年に正式リリースされました。
自然言語処理や深層学習技術により、営業・マーケティング・カスタマーサービスの生産性向上をサポートします。営業ではリードや商談のスコアリングや売上予測、顧客対応ではメール文面の自動生成や議事録作成、問い合わせ対応の効率化が可能です。
設定不要でAIを活用できる設計も魅力のひとつです。
Mazrica Sales(旧Senses)
Mazrica Salesは、株式会社マツリカが提供するSFA/CRMツールです。
AIを活用した受注確度の予測、案件の失注リスク分析機能を持ち、営業活動の最適化を図ります。導入企業は2,800社以上にのぼり、リコーやZ会などでの活用実績もあります。
属人的な判断に頼らず、データに基づいた営業判断が可能となる点が強みです。
Jasper
Jasperは、コンテンツ制作を効率化するAIライティングツールで、100,000以上の企業が導入しています。
広告文、SNS投稿、SEO記事、メール文面など多様な形式に対応し、プロンプト入力による文章生成のスピードと品質が高く評価されています。
最新アップデートではブランドトーンに合った表現の調整機能も実装され、大規模なマーケティングチームでも安心して使える仕様となっています。
ChatPlus
ChatPlusは、日本国内で2万社以上が導入しているチャットボット・チャットサポートSaaSです。
AIによる自然言語処理で、Webサイト上の顧客対応や社内問い合わせ対応を効率化できます。JALやカゴメなどの大手企業にも採用されています。
有人・無人の自動切替機能、VOC分析の統合など、柔軟な運用が可能です。
SUZAKU
SUZAKUは、SUS Co., Ltd.が提供する組織心理学とAIを融合させた人材マネジメントツールです。20年以上にわたる産学連携に基づくノウハウと3,000社以上の実績を誇ります。
社員の特性分析、適材適所の配置、離職予兆の検知、育成支援、AI採用マッチングなど、幅広い人事課題に対応しています。
判断根拠が「見える化」されるスパースモデリング搭載により、AI活用への心理的障壁を下げる設計が特徴です。
GitHub Copilot
GitHub Copilotは、Microsoft傘下のGitHubが提供するAIコード補完ツールです。
プログラマーの作業中に次のコード提案やテストコード自動生成をすれば、開発効率が向上します。主要な言語とIDEに対応し、生成コードのセキュリティリスクに配慮したEnterprise向けプランもあります。
プロンプトによる自然言語入力で、要件に即したコードの生成が可能です。
LegalForce
LegalForceは、LegalOn Technologiesが提供する契約書レビューAIツールです。
契約書中のリスク箇所を自動検出し、修正案を提示すれば企業法務の生産性を大幅に改善します。国内企業法務部門で広く利用されており、法的知見を搭載した高精度のレビューが可能です。
「契約書レビュー導入社数No.1」の実績を持ち、最新の法改正にも順次対応しています。
Adobe Firefly
Adobe Fireflyは、Adobeが開発した商用利用可能な画像生成AIツールです。
著作権に配慮したAdobe Stockや著作権切れコンテンツを学習データとしており、商用コンテンツ制作にも安心して活用可能です。最新モデルでは、スタイルや構図の参照による精度の高い画像生成が実現されています。
PhotoshopやIllustratorといったAdobe製品との連携により、一連のデザイン作業に組み込みやすい点も強みです。
Canva
Canvaは、ノンデザイナー向けに提供されているクラウド型デザインSaaSで、AI機能を統合したことでより直感的なデザイン制作が可能となりました。
画像生成、写真の修正・拡張(Magic Edit)、文書の要約やキャプション作成など多様なサポート機能が搭載されています。
教育、ビジネス、SNSなど多くのシーンで活用されており、25万点を超えるテンプレートと多言語対応で世界中のユーザーに支持されています。
Notion AI
Notion AIは、ドキュメント管理ツール「Notion」に統合された生成AI機能です。
2023年2月に正式リリースされ、文章生成、要約、翻訳、表作成、ブレスト支援など多機能な作業支援を実現しています。ClaudeやGPT-4ベースのチャット機能も搭載し、社内ナレッジの活用や文書作成の自動化を促進します。
FigmaやRakutenなどの導入企業もあり、再現性や正確性の担保には留意が必要ですが、使い方を工夫すれば業務の生産性向上に大きな効果を発揮するツールです。
生成AIを活用したSaaSを利用する3つのメリット

ここでは、生成AIを活用したSaaSを利用するメリットを3つ紹介します。
- 高度なAI技術を手軽に使い始められる
- 開発コストを抑えられる
- セキュリティが最新の状態に維持される
それぞれ詳しく見ていきましょう。
高度なAI技術を手軽に使い始められる
AI開発の専門知識がなくても、即座に高度な機能を業務に活用できるのが生成AIを活用したSaaSの魅力です。SaaSはクラウド経由で提供されるため、初期設定やサーバー準備といった煩雑な作業が不要で、導入後すぐに利用可能です。
たとえば、Notion AIでは、作成したページにAIアシスタントを呼び出すだけで文章生成や要約、翻訳などの機能が使用できます。また、議事録作成特化型AIやチャットサポート自動化ツールなど、業務目的に応じた特化型サービスも数多く存在します。
生成AIを活用したSaaSにより、スモールスタートでも確実にAI活用を始められるでしょう。
開発コストを抑えられる
内製開発に比べて、初期投資と運用負荷を大幅に削減できる点も大きな利点です。AIシステムを自社でゼロから構築するには、高度なスキルを持つ人材の採用・育成、インフラ構築、保守運用などコストが必要となるのはご存じでしょうか。
これに対し、SaaS型AIはサブスクリプション形式で月額・年額課金が一般的であり、初期費用を抑えつつ段階的に活用範囲を広げられるメリットがあります。中小企業やスタートアップにとって、AI導入の障壁を下げる合理的な選択肢となるでしょう。
成果に連動した課金体系を採用するベンダーも存在し、投資対効果を可視化しやすいのも魅力です。
セキュリティが最新の状態に維持される
SaaS型サービスでは、提供事業者がセキュリティ対策やAIのチューニングを随時実施するため、ユーザーは常に最新状態で安心して利用できるという点も見逃せません。特に、情報漏洩や脅威に対する対応スピードが重視される現代では、専門運用チームによる継続的なアップデート体制が重宝されるでしょう。
さらに、生成AIは利用データをもとに継続的に学習・最適化が行われるため、業務ニーズや市場環境の変化にも柔軟に適応します。最近ではマルチモーダルAIのように、テキスト・画像・音声といった複数データを統合的に解析できる機能も実装されつつあり、より多様な業務に対応可能です。
先進技術に常時アクセスできるのも、SaaSならではの恩恵と言えるでしょう。
生成AIを活用したSaaSを利用する際の3つの注意点

最後に、生成AIを活用したSaaSを利用する際の注意点を3つ紹介します。
- 自社業務に完全に合うサービスが見つからない場合がある
- 柔軟なカスタマイズが難しく自由度が下がる可能性がある
- ランニングコストが継続的に発生する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
自社業務に完全に合うサービスが見つからない場合がある
生成AI SaaSは一般的な業務ニーズを想定して設計されているため、自社特有の業務プロセスや専門的な要件に完全対応するサービスが見つからない可能性があります。特に、業界特有の用語や判断基準、承認フローなどが存在する業務では、汎用的なSaaSでは対応が難しい場合があるでしょう。
導入前には自社の業務内容や課題を具体的に棚卸しして、候補サービスがどの程度まで要件を満たせるかを検証する作業が欠かせません。導入後に機能の不一致が判明すると、かえって業務の手間が増える、あるいは定着しないといったリスクにつながるため注意が必要です。
柔軟なカスタマイズが難しく自由度が下がる可能性がある
SaaSは提供企業が複数ユーザー向けに同一基盤で運用しているため、利用者側の要望を反映した柔軟なカスタマイズが難しいケースがあります。特に、社内の独自システムとの連携や複雑なワークフローとの統合が必要な場合、SaaSの標準機能では不十分となるおそれがあるでしょう。
導入前にはAPIの公開状況や外部連携の可否、拡張性の有無を必ず確認しておくのがおすすめです。複数のツールを組み合わせて自社仕様のワークフローを構築するのも視野に入れつつ、SaaSをどのように活用するかを中長期で検討する視点が求められます。
ランニングコストが継続的に発生する
SaaS型サービスの多くは月額・年額課金のサブスクリプションモデルで提供されており、利用期間中は継続的な費用が発生します。初期投資は抑えられる一方、ユーザー数の追加や上位機能の利用によって料金が段階的に増加する仕組みのサービスも存在します。
導入前には短期の費用だけでなく、中長期でのコスト総額を試算し、予算計画に組み込んでおきましょう。また、サービスの利用実態や業務効率化の成果を定期的に評価し、費用対効果が低いと判断された場合には解約やプラン見直しを検討する柔軟性も欠かせません。
コストと成果のバランスを定期的に見直す体制が、無駄な出費を防ぎ、SaaS型サービスの最適な運用を支えるポイントとなります。
自社に合った生成AIを活用したSaaSサービスを選んで業務を効率化しよう!

本記事では、生成AIを活用したSaaS(AI SaaS)の導入を検討する経営者・担当者様に向けて、メリットや注意点、そして具体的な選び方やサービス事例を紹介しました。
適切なAI SaaSを選び活用すれば、業務効率化や人件費削減、ひいては競争力強化につながる可能性があります。
【自社に合ったAI SaaSを選ぶためのポイント】
- 解決したい業務課題や必要な機能を明確にする
- 費用対効果、自社業務へのフィット、セキュリティ対策を確認する
- 紹介したサービス事例などを参考に比較検討する
AI SaaSの導入は、組織全体の変革を視野に入れ、戦略的に進めるのが業務効率化への近道です。最適なサービスを選び継続的に活用すれば、限られた経営資源を最大限に活かし、ビジネスの競争力を高めていきましょう。
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