「ChatGPTとGeminiって何が違うの?」
「AIツールの機能や特徴を比較したいけど、どこを見ればいいのかわからない……」
「実際にどっちがより使いやすいのか、比較結果が知りたい!」
AIツールの選択を間違えると、作業効率が上がらないだけでなく、余計な時間とコストがかかってしまう可能性があります。そのため、ChatGPTとGeminiの違いを正しく理解し、自分に合ったツールを選ぶことが重要です。
私はAIツールの比較・分析を専門とする研究者として、実際にChatGPTとGeminiの両方を使い倒し、それぞれのメリット・デメリットを徹底的に比較検証しました。
この記事では、ChatGPTとGeminiの違いをわかりやすく解説し、あなたの目的に最適なAIツール選びをサポートします。
具体的には、下記の内容をこの記事ではお伝えしていきます。
- ChatGPTとGeminiの特徴を7つの項目別に徹底比較
- 文章生成・要約・翻訳など、実際の出力テスト結果による性能検証
- それぞれのAIツールに適したユーザーの特徴と使用時の注意点
この記事を読むことで、あなたの目的や状況に最適なAIツールを選択でき、作業効率の大幅な向上や新しいアイデアの創出につながるでしょう。
ぜひ、最後まで読んでください。
ChatGPTとGeminiはどんなツール?特徴を比較
ChatGPTとGeminiは生成AIツールの一つです。生成AIはGenerative AIとも呼ばれ、新しくコンテンツを生み出すことを得意としています。
具体的にどのようなツールなのか、それぞれの特徴を比較していきましょう。
ChatGPTとは
ChatGPTとは、2022年11月にOpenAIが公開した生成AIツールです。
ChatGPTのGPTとは「Generative Pre-trained Transformer」の略で、大規模な言語データを事前に学習させている言語モデルを指します。そのデータ量は本に換算すると約25万冊分以上です。
自然言語処理に優れており、自然な文章や、与えられた指示に基づいた文章の作成に長けています。とくに特徴的なのは、GPTsというあらゆる役割にカスタマイズしたChatGPTを利用できることです。
GPTsは自分で作成できるだけでなく、ほかの人が作成したGPTsを利用することもできます。
Gemini(ジェミニ)とは
Geminiは、2023年12月にGoogleから発表された生成AIです。Googleは元々Bardという生成AIを提供していましたが、2024年2月にGeminiへと統合されました。
Geminiは、テキスト・画像・音声・動画など複数のデータ形式を同時に処理できる「マルチモーダル機能」を備えています。
用途に応じて4種類のモデルサイズを展開しており、データセンターからモバイルデバイスまであらゆるプラットフォームに対応しています。Google WorkspaceなどGoogleが提供する業務系ツールと連携できる点も特徴です。
ChatGPTとGeminiの違いは?7つの項目別に比較
ChatGPTとGeminiにはそれぞれに違った強みがあり、その違いを理解すればAIツールを最大限活用できます。
ここでは、次の7つの項目に分けて比較していきましょう。
- 開発元の会社
- 無料版の機能
- 有料版の料金
- 読み込める文字数
- カスタマイズ性
- 音声認識
- 画像読み込み・生成
開発元の会社
ChatGPTの開発元の会社はOpen AIです。Open AIは2015年に設立された非営利研究機関であり、人類にとって有益なAI発展を目的として、さまざまなAIモデルやサービスを開発しています。
一方でGeminiの開発元の会社はGoogleです。Googleは1998年に設立された営利企業で、インターネット関連のサービスと製品を取り扱っており、世界最大の検索エンジンを運営しています。
どちらも生成AIツールであるという点に違いはありません。しかし、基盤となるそれぞれの会社の強みを活かしたサービスを提供することで、多くの違いが生まれています。
無料版で利用できる機能
ここではChatGPTとGeminiの無料版で利用できる機能をご紹介します。
ChatGPTの無料版では、次の機能が利用できます。
機能 | 無料版の有無 | 概要 |
---|---|---|
GPT-4o | △(利用制限あり) | 最新モデル |
GPT-4o mini | △(利用制限あり) | 高速応答に特化した最新モデル |
GPTsの利用 | ◯ | 自分での作成は有料版のみ |
最新モデルのGPT-4oとGPT-4o miniは無料版でも利用できます。
ただし無料版では、最初の会話でGPT-4oが使用され、回数制限(5時間に約10回)に達すると自動的にGPT-4o miniに移行する仕組みとなっています。
一方でGeminiの無料版で利用できるモデルは次の表のとおりです。
機能 | 無料版の有無 | 概要 |
---|---|---|
Gemini 1.5 Flash | ◯ | Gemini 1.5 proの軽量モデル |
Googleサービスと連携 | ◯ | Gmail、YouTube、Googleドキュメントなど多数対応 |
Geminiの無料版では、2024年7月に発表された最新モデル「Gemini 1.5 Flash」が利用できます。
「Gemini 1.5 Flash」は、汎用性の高い中型モデルである「Gemini 1.5 pro」をベースに軽量化されたモデルです。
無料版では機能に大きな制限はありませんが、有料版と比較すると読み込める文字数などに差があります。
また、Geminiの強みでもあるGoogleサービスとの連携は、無料版でも利用可能です。
有料版の料金
ChatGPTとGeminiの有料版の料金は次のとおりです。
ChatGPT plus | Gemini Advanced | |
---|---|---|
月額料金 | 20ドル(約3,000円) | 2,900円 |
無料トライアル期間 | なし | 2か月 |
有料版の主な追加機能 | GPT-4、画像生成、Canvasなど | Gemini Ultra、2TBのストレージなど |
ChatGPTは為替変動の影響を受けるため、月額料金が固定されません。
一方でGeminiは日本円での請求なので、価格が固定されています。
また、Geminiは2か月の無料トライアル期間を設けているため、お財布への優しさという点ではGeminiに軍配が上がるかもしれません。
読み込める文字数
読み込める文字数は、ChatGPTとGeminiで大きく異なります。
次の表はそれぞれ無料版、有料版で読み込める文字数を示しました。
ChatGPT | Gemini | |
---|---|---|
無料版 | 約10,000文字 | 約10万文字 |
有料版 | 約25,000文字 | 約70万文字 |
この数値だけを見ると、GeminiはChatGPTの10倍以上の文字数を読み込めることになります。
つまりGeminiは無料版でも長文を読み取れ、有料版であれば分厚い論文や報告書などでも短時間で処理できる可能性が、ChatGPTに比べて高いといえるでしょう。
カスタマイズ性
ChatGPTとGeminiには、特定の目的に合わせて独自にカスタマイズしたチャットボットを利用する機能があります。ChatGPTではGPTs、GeminiではGemと呼ばれます。
無料版、有料版での違いも含めて、次の表にまとめました。
GPTs(ChatGPT) | Gem(Gemini) | |
---|---|---|
無料版 | ほかのユーザーが作成したGPTsの利用が可能 | Googleの作成した4種類のGemが利用可能 |
有料版 | 自分で作成し、共有可能 | 自分で作成可能 |
現在、Geminiではほかのユーザーが作成したGemを利用する手段がありませんが、ChatGPTではGPTsを公開することでほかのユーザーが利用可能になります。
音声認識
音声認識はChatGPTとGeminiいずれも利用可能ですが、仕様に違いがあります。
まず、音声ファイルの文字起こしについてです。
ChatGPTでは、直接ファイルをアップロードしても文字起こしができません。その代わり、開発元であるOpen AIが公開している「Whisper」という音声認識エンジンを活用することで文字起こしが可能になります。
一方でGeminiは、直接ファイルをアップロードすると即座に文字起こしができます。
次に会話機能についてです。
ChatGPTでは2024年9月25日に「高度な音声モード(advanced Voice Mode)」が有料版でリリースされました。「高度な音声モード」は、人の感情や非言語的なジェスチャーの意味を、素早く理解し応答するリアルタイムの会話機能です。より自然な会話が可能になり、ユーザーの感情を感知します。
一方でGeminiでは、2024年10月23日に「Gemini Live」の日本での対応を開始しました。
「Gemini Live」はモバイル向けの会話型AIで、自然な会話をしながら情報を得たり、応答を途中でさえぎって質問をしたりする機能がそなわっています。
会話機能としての音声認識は両方ともリリースされたばかりであり、今後に注目です。
画像読み込み・生成
画像の読み込み・生成についてはChatGPTとGeminiで次のような違いがあります。
ChatGPT | Gemini | |
---|---|---|
無料版 | △(読み取り・生成ともに利用制限あり) | ◯(生成は英語で依頼) |
有料版 | ◯ | ◯(生成は英語で依頼) |
ChatGPTは画像生成に「DALL-E」というOpen AIが提供する画像生成AIモデルを使用しています。無料版では1日2枚まで生成可能です。
Geminiでは無料版でも画像読み取り・生成が制限なく行えます。
ただし画像生成は日本語で依頼すると拒否されるため、英語での依頼が必要です。
【出力テスト】ChatGPTとGeminiの比較
ここではChatGPTとGeminiの無料版に同じ指示を出して、それぞれどのような違いが生まれるのかを実際に出力して比較していきます。
想定する場面は次の2つです。
- 文章の生成
- 文章の要約
それぞれ出力して得られた結果を画像とともにみていきましょう。
文章の生成
文章の生成について、次のようなプロンプトを入力しました。
【プロンプト】 あなたはブログ記事のライターです。 以下の条件に従い、ChatGPTとGeminiの違いについて説明するブログ記事の文章を生成してください。 ### 条件: – 300文字程度 – ですます調 |
まずは、ChatGPTの結果は下記のとおりでした。
【ChatGPT】 |
次に、Geminiの結果は下記のとおりでした。
【Gemini】 |
ChatGPTの出力結果からは、与えられた条件を守りながら正確で自然な文章が生成されているといえるでしょう。文字数は283文字と最適です。
一方でGeminiの出力結果を見ると、文字数が452文字と少し制限を超えてしまっています。
しかし内容をみると、次の特徴が挙げられます。
- タイトルを生成している
- 箇条書きを利用している
つまりGeminiはよりブログ記事らしい文章を生成しているともいえるかもしれません。
文章の要約
文章の要約について、まず次の架空の物語をChatGPTで生成しました。
【ChatGPT】 |
こちらの物語を要約すると、ChatGPTでは次の結果が得られました。
【ChatGPT】 |
次にGeminiでは下記のような結果になりました。
【Gemini】 |
ChatGPT、Geminiいずれも簡潔に要約しています。ハルシネーションはありませんが、文章量がそこまで多くなかったため、比較が難しいかもしれません。
ただし、Geminiではポイントも箇条書きしているため、別角度でも要点をつかめることがわかるでしょう。
ChatGPTがおすすめな人の特徴
ChatGPTは、次の2つの特徴がある人におすすめです。
- GPTsを使って機能を拡充したい人
- 長い文章や複雑な文章を入力・生成したい人
詳しくみていきましょう。
GPTsを使って機能を拡充したい人
GPTsを使ってより機能拡充を図りたい人は、ChatGPTがおすすめです。
ほかのユーザーが公開している人気GPTsを使うことですぐに作業を効率化できます。
さらに自分で自由にカスタマイズすることで、ニーズに最適化された機能を実装することも可能です。
プログラミングが不要なので、システム開発の知識がなくても簡単にGPTが作れます。
たとえば、GPTsでは次のような業務が実現できます。
- 競合商品の調査と分析
- スケジュール管理
- 問い合わせ対応の自動化・最適化
- プログラミングコードの最適化・開発アドバイスなど
GPTsの利用だけなら無料版でも自由に行えます。GPTsを使って幅広く機能を活用したい人は、ChatGPTをぜひ試してみてください。
長い文章や複雑な文章を入力・生成したい人
ChatGPTは長い文章や複雑な文章を扱いたい人におすすめです。
大規模なテキストデータで学習した言語モデルであり、あらゆるテーマでの文章生成を行えます。
文章スタイルは形式的な文章からカジュアルな文章まで幅広く対応しており、ストーリーや詩などの創作にも活用できます。
実際、2024年の芥川賞を受賞した『東京都同情塔』では、ChatGPTなどの文章生成AIを駆使していると著者は話していました。
長く複雑な文章を作成したいと考えている人は、ChatGPTを活用するのに間違いはないでしょう。
Geminiがおすすめな人の特徴
Geminiがおすすめな人の特徴は、次の3つが挙げられます。
- AIツールとGoogleを連携させたい人
- 出力結果の参照元を確認したい人
- 標準でマルチモーダルに対応しているAIを使いたい人
具体的に解説していきます。
AIツールとGoogleを連携させたい人
普段からGoogleのサービスを使っていて、AIツールと連携させたいと考えている人にはGeminiがうってつけです。
GeminiはGoogleが提供している生成AIツールなので、Google各種サービスと連携して拡張機能を利用できます。
拡張機能として利用できるGoogleサービスは以下のとおりです。
- Google Workspace
- Googleフライト
- Googleホテル
- Googleマップ
- YouTube
Google Workspaceは、GmailやGoogleドキュメントなどのクラウド上のオフィスツールセットです。これらと連携するとAI支援機能が追加され、機能が拡張できます。
たとえば、Googleドキュメントであれば文章の校正・推敲、Gmailであればリマインダー設定などが使用可能です。
Googleとの連携でAIツールを使いこなしたい人は、Geminiを導入してみましょう。
出力結果の参照元を確認したい人
生成AIで出力された結果の参照元を確認したい人は、Geminiがおすすめです。
AIによって生成された文章はハルシネーションという現象が起こることがあります。ハルシネーションとは日本語で「幻覚」を意味し、生成AIが事実に基づかない情報を生成することです。そのため、AIを活用する人は、根拠を丁寧に探すことが必要になります。
Geminiでは出力結果ごとに参照元を確認する機能が備わっているため、ハルシネーションが起きた場合にその文章をハイライトで示してくれます。
出力結果の参照元を確認する必要がある人は、Geminiを試してみてください。
標準でマルチモーダルに対応しているAIを使いたい人
マルチモーダルに対応しているAIを基本として活用したい人は、Geminiを使いましょう。
マルチモーダルAIであるGeminiは、テキスト、画像、動画などの複数のモダリティから情報を処理できます。そのため、ChatGPTのようにほかのAIツールと連携する必要がありません。
Gemini単体で画像を認識して説明したり、音声からテキストに変換したりといった、高度なタスクを実行できます。
テキストデータだけでなく、画像・音声データなども扱う機会が多い人にとって、Geminiは生成AIツールの中でも非常に有力な選択肢となるでしょう。
ChatGPTやGeminiの使用時に注意すべきポイント
ChatGPTやGeminiには多くの機能があり、使いこなすことで作業効率が劇的に向上するのは想像が難しくないでしょう。
ただし使用時に注意すべき、次の3つのポイントがあります。
- 古い情報や誤った情報が出力される可能性がある
- 一度で求めている回答が得られるとは限らない
- 情報漏洩のリスクがある
詳しく解説していきます。
古い情報や誤った情報が出力される可能性がある
生成AIは、学習データに基づいて生成された文章を出力する仕組みになっています。そのため、学習データに古い情報や誤った情報が含まれている場合、出力結果にも反映される可能性が高いです。
たとえば、AIのように急速に変化する分野では、1か月前の情報がすでに古い情報となっていることもあります。
絶えず最新の情報を確認するようにして、出力結果に惑わされない体制を整えましょう。
一度で求めている回答が得られるとは限らない
生成AIでは、一度の質問で必ずしも求めている回答が得られるとは限りません。これには、2つの理由が考えられます。
一つは、人間による指示があいまいであること。AIは人間の指示を完璧に理解できるわけではないので、必要十分な指示を与える必要があります。不十分な指示だと、それだけ回答にばらつきが生まれる原因となります。
もう一つは、「temperature」という概念です。これはランダム性の度合いを制御する概念であり、このパラメータを設定することで、回答のばらつき度合いが変化します。
標準の生成AIでは、ある程度ばらつくようなパラメータに設定されているため、そもそも回答が固定されることはありません。
「temperature」の概念を理解したうえで、最適な指示を与えるよう意識しましょう。
情報漏洩のリスクがある
生成AIに個人情報や機密情報を入力する場合、情報漏洩のリスクが伴います。なぜならユーザーが入力した情報も学習に用いる場合があるからです。
実際に、韓国の大手電子製品メーカーであるサムスン電子で、従業員がエラーとなったソースコードをChatGPTに入力し、バグ・修正依頼を指示したことで情報流出が発生しました。
出典:サムスン、ChatGPTの社内使用禁止 機密コードの流出受け
ChatGPTの場合では、Web版とAPI版が存在し、API版では入力した情報が他人へ使われることはありません。それぞれの生成AIの利用規約を熟読し、大きな事態を引き起こさないよう、利用者としての責任を持ちましょう。
ChatGPTとGeminiを比較して自分に合ったAIツールを見つけよう
ChatGPTとGeminiの特徴を7つの項目で比較し、それぞれの強みを詳しく解説しました。
ChatGPTは、GPTsによる高度なカスタマイズ性と、長文生成の能力が魅力です。業務効率化を図りたい人やアイデアを膨らませたい人におすすめです。
一方でGeminiはGoogleサービスとの連携がスムーズで、マルチモーダルな能力が強みです。Googleの各種サービスを普段から利用している人や、あらゆるデータを扱う人にとっては、使いこなしやすいツールとなるでしょう。
どちらを選ぶかは、作業スタイルや、求める機能によって異なります。この記事で紹介した情報を参考にしながら、あなたにぴったりのAIツールを見つけてみてください。