blog

ChatGPTのファインチューニングとは?概要や手順・導入するメリット・デメリットについても解説

ChatGPTを業務で活用しているものの、自社独自の要望に応えられず、期待通りの結果が得られていないとお悩みではないでしょうか。そのようなとき、ファインチューニングという機能を使えば、ChatGPTを自社の業務に最適化することが可能です。

本記事では、ファインチューニングの基本的な仕組みから具体的な実施手順、メリット・デメリットまで詳しく解説していきます。さらに、実際の活用事例も紹介するので、自社での導入検討に役立てることが可能です。

【記事を読んで得られること】

  • ChatGPTのファインチューニングの利点
  • ChatGPTのファインチューニングの手順
  • ChatGPTのファインチューニングの注意点

ファインチューニングの特徴を理解し、適切に活用することで、より効率的な業務改善の実現につながるかもしれません。コストと効果のバランスを見極めながら、最適な導入方法を見つけていきましょう。

目次

ChatGPTのファインチューニングとは?

AIモデルに特定分野の知識や独自の応答パターンを学習させる技術がファインチューニングです。既存のChatGPTの基本性能を保ちながら、ユーザーが望む方向性で応答をカスタマイズできる仕組みになっています。ここでは、以下の3点について確認していきましょう。

ChatGPTのファインチューニングとは?
  • 事前学習との違い
  • 主な学習データの種類
  • 具体的な料金体系

具体的に解説していきます。

事前学習との違い

ChatGPTの基盤となるGPT(Generative Pre-trained Transformer)は、インターネット上の膨大なデータを使って事前学習を完了したモデルです。このモデルは2021年9月までに公開されているデータを学習していますが、それ以降の情報や企業内の非公開データは把握していません。

そこで必要になるのがファインチューニングという追加学習の仕組みです。新しい情報や特定の専門知識を追加で学習させることで、AIの知識を更新したり拡張したりすることができます。

主な学習データ

ファインチューニングで活用される学習データは、目的に応じて3種類に分類できます。

1つ目は企業内の非公開文書で、社内で日々作成される資料などの情報です。2つ目は医療や法律、金融といった専門性の高い分野のデータが該当します。専門家が求める精度を実現するために、業界固有の知識を追加で学習させることが重要です。

3つ目は最新のインターネット情報で、ChatGPTの基本モデルが学習していない新しいデータを取り込むことができます。

ファインチューニングの料金

ChatGPTのファインチューニングは、使用するトークン数に応じて料金が発生します。モデルの種類や用途によって価格が異なるため、以下の表を参考に選択してください。

モデル名トレーニング入力出力
gpt-3.5-turbo8ドル(約1,200円)3ドル(約450円)6ドル(約900円)
davinci-0026ドル(約900円)12ドル(約1,800円12ドル(約1,800円)
babbage-0020.4ドル(約60円)1.6ドル(約240円)1.6ドル(約240円)
※料金は100万トークンあたりの金額です。

ChatGPTをファインチューニングする方法

ファインチューニングの実装は、Pythonを使用して効率的に進めることができます。基本的な手順は以下の通りです。

APIキーの設定openai.api_key = ‘YOUR_API_KEY’
データの準備と変換def prepare_training_data(conversations):    return [        {            “messages”: [                {“role”: “user”, “content”: conv[“question”]},                {“role”: “assistant”, “content”: conv[“answer”]}            ]        }        for conv in conversations    ]
ファインチューニングの実行def start_fine_tuning(file_id, model=”gpt-3.5-turbo”):    return openai.FineTuningJob.create(        training_file=file_id,        model=model    )

具体的に解説していきましょう。

APIキーを取得

OpenAIのウェブサイトでアカウントを作成し、APIキーを取得します。管理画面から「API Keys」セクションを開き、「Create new secret key」をクリックしてキーを発行してください。

このキーは一度しか表示されないため、安全な場所に保存しておく必要があります。外部に流出しないよう、取り扱いには十分な注意を払いましょう。

追加学習のデータを準備

ファインチューニングでは、質問と回答のペアで構成された「デモ会話」を用意します。

データはJSONLフォーマットで保存し、最低でも10個、理想的には50~100個程度の会話サンプルを準備しておきましょう。OpenAI社の専用ツールでデータ形式を事前に確認し、学習時のエラーを防ぐことが重要です。

目的を明確にする

ファインチューニングの目的を具体的に設定します。ファインチューニングの目的に応じて、必要なデータの種類や特徴が異なるため、「商品の技術仕様に関する質問への回答精度を95%以上にする」といった、明確な数値目標を立てましょう。

漠然とした目標では効果を測定できないので、できるだけ具体的な指標を決めることが重要です。

データ収集

目的に合わせて、質の高いデータを収集します。タスクに関連性が高く、多様性を持つデータを収集しましょう。社内文書やマニュアル、FAQなどから必要な情報を抽出していきます。データの質が学習結果を左右するため、信頼できる情報源から慎重に収集することが重要です。収集したデータは整理して、重複や不要な情報を取り除きましょう。

データを加工する

収集したデータを学習に適した形式に整形します。文章の長さを揃え、不要な記号や改行を削除し、一貫した書式に統一していく作業です。

この段階で基本的なフォーマットを整えることで、後の工程がスムーズになります。特に句読点の使い方や改行位置は統一することが重要です。

ラベリングする

質問と回答のデータペアに適切なラベルを付与する作業がラベリングです。例えば、商品の問い合わせであれば「製品仕様」「価格」「使用方法」などのカテゴリーに分類していきましょう。

また、質問の意図や回答の種類なども明確にラベリングすることで、モデルの学習精度が向上します。作業の一貫性を保つため、ラベリングの基準をあらかじめ決めておきましょう。

データセットを分割する

準備したデータセットは、以下の3種類に分割します。

  • 訓練セット(70~80%)…モデルの学習に使用、最も多くのデータ量が必要
  • 検証セット(10~15%)…学習過程での評価に使用、モデルの調整に活用
  • テストセット(10~15%)…最終的な性能評価に使用、学習には一切使用しない

分割の際は、各セットにすべてのカテゴリーのデータが均等に含まれるよう注意が必要です。この適切な分割により、モデルの性能を正確に評価することができます。

データを拡張する

データ量が不足している場合や、モデルの汎用性を高めるために、データの拡張を行います。テキストデータの場合、同義語への置き換えや文章構造の変更が有効です。また、質問文を丁寧語から普通語に変換したり、質問の順序を入れ替えたりすることで、バリエーションを増やすことができます。

ただし、元の意味が大きく変わらないよう注意が必要です。自然な日本語表現を維持しながら、データ量を適切に増やしていきましょう。

品質をチェックする

データセットの品質を確認し、必要に応じてクリーニングや再ラベリングを行います。品質の良し悪しはファインチューニングの結果に直接影響を与えるため、このステップは特に重要です。

具体的には、誤字脱字のチェック、内容の一貫性確認、データの偏りの確認などを行いましょう。手間のかかる作業ですが、モデルの性能向上には不可欠な工程となります。

データをアップロード

OpenAIのプラットフォームにデータをアップロードする作業を行いましょう。アップロードできるファイルサイズは100MB以下となっており、ファイル形式はJSONLのみに限定されています。

アップロード後は、システムがデータを正しく認識できているか必ず確認しましょう。エラーが表示された場合は、データの形式や内容を見直し、必要な修正を加えていきます。アップロードの際はインターネット接続が安定していることも確認が必要です。

モデルをファインチューニングして結果確認

アップロードが完了したら、いよいよモデルの学習を開始します。管理画面で学習の進捗状況をモニタリングしながら、完了を待ちましょう。その後、テストデータを使って性能評価を行い、目標とする精度が得られているか確認します。

必要に応じて、学習パラメータの調整や追加の学習を検討しましょう。結果に満足できない場合は、データの見直しから始めることをおすすめします。

ChatGPTのファインチューニングの支払い方法

ファインチューニングの料金は、クレジットカードでの支払いに対応しています。支払い用のクレジットカードを登録するには、管理画面のBillingセクションにある「Add payment details」から手続きを進めましょう。Billingセクションでは、現在のクレジット数も確認することができます。

利用金額の管理については、Usage limits画面で2種類の制限を設定可能です。「Hard limit」では利用できる金額の上限を、「Soft limit」では、指定した金額に達した際に通知メールが届く設定ができます。

支払い履歴は管理画面からいつでも確認できます。また、法人利用の場合は請求書払いも選択することが可能です。

ChatGPTのファインチューニングでよくあるエラーと対処法

ファインチューニングを実施する際には、いくつかの代表的なエラーが発生する可能性があります。主なエラーは次の通りです。

ChatGPTのファインチューニングでよくあるエラーと対処法
  • テストデータの形式が古い・途切れる
  • 学習時に回答が混ざる
  • アップロードしたファイルが見つからない

適切な対応を行うことで、スムーズな学習の実施が可能です。エラーが発生した際は、慌てずにエラーメッセージを確認しましょう。

テストデータの形式が古い・途切れる

ChatGPTにテストデータの作成を依頼する際は、最新のフォーマットを明示的に指定する必要があります。サンプルを示さずにデータ作成を依頼すると、古い形式でデータが生成されてしまうからです。

また、初期設定ではMaximum Tokensの値が小さいため、データが途中で途切れてしまいます。この問題を解決するには、Maximum Tokensの設定値を増やしていきましょう。テストデータは最低でも10件必要となっているため、十分な量のデータが生成されるよう注意してください。エラーが発生した場合は、まずデータ形式の確認から始めることをおすすめします。

学習時に回答が混ざる

学習データ内で、質問と回答のペアが正しく区別されていない場合にエラーが発生します。このような場合は、データのフォーマットを見直し、各ペアが明確に分かれているか確認しましょう。JSONLファイル内の「role」と「content」の設定が適切か確認します。各データの区切りが曖昧な場合は、明確な区切り文字を挿入してください。

また、質問と回答の組み合わせが1対1になっているかも確認が必要です。データの前処理段階で、不要な空白や特殊文字が混入していないことも確認しましょう。これらを怠ると、学習時に予期せぬエラーが発生する可能性があります。

アップロードしたファイルが見つからない

ファイルのアップロード後にエラーが発生した場合、システムの状態確認が必要となります。アップロードの成功とJSONLファイルのパース処理は別々に判定されているためです。ファイルの状態は管理画面から確認することができます。

ステータス情報では、「status」が「error」の場合、JSONの解析に失敗していることを示しています。具体的なエラー内容は「status_details」に記録されているため、こちらを確認していきましょう。

一方、アップロードが正常に完了した場合は、「status」が「processed」と表示されます。エラーが発生した場合は、JSONLファイルの形式を見直してください。特に改行やインデントの位置に注意が必要です。

ChatGPTをファインチューニングするメリット5つ

ChatGPTのファインチューニングには、多くのメリットが存在しています。基本的な機能を拡張し、より高度な活用が可能となるからです。特に企業での利用において大きな効果を発揮していくでしょう。ここでは、主な5つのメリットを解説します。

ChatGPTをファインチューニングするメリット5つ
  • 専門的な回答精度が高まる
  • 最新情報をインプットできる
  • 回答生成のスピードが上がる
  • 初心者でも簡単に実施できる
  • プロンプトを短くしてトークンを節約できる

それぞれの特徴を理解することで、効果的な活用方法を見出すことができます。実際の導入事例も増えてきているため、参考にできる情報も豊富となっているのです。

専門的な回答精度が高まる

ファインチューニングにより、特定の分野における回答の正確性が大幅に向上します。例えば、医療や法律といった専門分野の知識を学習させることが可能になり、通常のChatGPTでは対応が難しい専門用語や業界特有の表現も適切に理解できるようになっていきます。

また、企業独自の製品情報や社内規定なども正確に反映させることができるため、カスタマーサポートなどでの活用も期待できます。さらに、専門家の知見や経験則なども学習データとして取り込むことで、より実践的な回答が可能となっていきます。これにより、ユーザーからの複雑な質問にも的確に対応することができるようになります。

最新情報をインプットできる

ファインチューニングをすることで、ChatGPTの基本モデルには含まれていない最新の情報を追加することが可能です。定期的に更新される製品情報や、市場動向などを学習させることができます。これにより、常に最新の情報に基づいた回答を提供してくれるのです。

特に、急速に変化する業界や、頻繁にアップデートが必要な分野での活用が効果的であるため、多くの企業で採用が進められています。情報の更新頻度に応じて柔軟に学習を実施できるため、鮮度の高い情報提供が可能となっているのです。

回答生成のスピードが上がる

ファインチューニング済みのモデルを利用すると、通常の対話よりも回答生成が高速化されます。複雑で細かいプロンプトが不要となり、チューニングしたデータから直接的に回答を生成できるためです。

また、プロンプトが簡潔になることでトークン量も削減され、API使用料の節約にもつながっていきます。結果として、業務効率の向上が期待できるのです。

初心者でも簡単に実施できる

ファインチューニングは、プログラミングの経験が少ない方でも取り組めます。OpenAIが提供している専用のインターフェースを使用すれば、直感的な操作が可能であるためです。実装に必要な設定項目も最小限に抑えられていきます。

また、公式サイトには詳細なドキュメントや具体的な事例も豊富に用意されているため、段階的に学習を進めることができます。サポート体制も充実しているので安心です。

プロンプトを短くしてトークンを節約できる

ファインチューニング済みのモデルでは、簡潔なプロンプトで複雑な指示を出すことができます。通常のChatGPTでは「企業の特定商品について、性能と価格を比較して説明してください」といった長い指示が必要な場合でも、「商品Aを説明」といった短いプロンプトで同様の結果を得られるのです。

これによりトークン数を大幅に削減することが可能となっていきます。トークンの使用量が減少することでAPIの利用コストも抑えられるため、長期的な運用コストの削減につながるでしょう。

ChatGPTをファインチューニングする3つのデメリット

ファインチューニングには多くのメリットがありますが、同時にいくつかの課題も存在しています。導入を検討する際は、これらのデメリットについても十分に理解しておく必要があるといえるでしょう。以下では主な3つのデメリットについて説明していきます。

ChatGPTをファインチューニングする3つのデメリット
  • モデル学習にコストがかかる
  • モデルのアップデートごとにファインチューニングが必要になる
  • 高クオリティかつ大量のデータが必要になる

これらの課題に対する対策を事前に検討しておくことで、より効果的な導入が可能となります。予算や人員配置も考慮しましょう。

モデル学習にコストがかかる

ファインチューニングの利用には、一定の料金が必要です。ChatGPT無料版(GPT-3.5)の場合、学習には1000トークンあたり0.008ドル(約1.2円)のコストがかかります。さらに、実際の運用時にはテキスト入力に0.030ドル、出力に0.060ドルが必要になるのです。

精度の高いファインチューニングを実現するには大量の学習データが必要ですが、データ量が増えるほど料金も高額になってしまいます。そのため、事前に使用上限金額を設定し、計画的な運用を心がけることが重要です。コストと精度のバランスを考慮した導入計画を立てましょう。

モデルのアップデートごとにファインチューニングが必要になる

ファインチューニングを実施したモデルは、一度設定すれば日々のメンテナンスは不要となります。しかし、OpenAIがベースとなるモデル自体をアップデートした場合、再度ファインチューニングを行う必要があるので、注意しましょう。

ChatGPTは定期的にアップデートが実施されていきます。そのたびにファインチューニングの再設定が必要となるため、相当な時間と手間がかかってしまいます。導入を検討する際は、この継続的な作業負担についても考慮することが重要です。計画的な運用体制の構築が求められるでしょう。

高クオリティかつ大量のデータが必要になる

ファインチューニングで期待する成果を得るためには、質の高い学習データを大量に用意する必要があります。データの品質が不十分な場合や、量が不足している場合、希望する精度のモデルを作成できない可能性が高いのです。適切なデータを収集する作業には、相当な時間と労力がかかるため、デメリットといえるでしょう。

また、収集したデータの整理や検証も丁寧に行う必要があるため、準備段階での作業負担が大きくなります。しかし、この工程を疎かにすると期待する効果が得られないため、十分な時間をかけて質の高いデータを収集することが重要です。

ChatGPTのファインチューニングがおすすめのパターン5つ

ファインチューニングは、特定の状況下で特に大きな効果を発揮します。効果的な活用のため、導入に適した以下の5つのパターンを解説していきましょう。

ChatGPTのファインチューニングがおすすめのパターン5つ
  • 正確な知識を与えたい
  • 情報をアップデートしたい
  • 出力の形式を統一したい
  • 指示内容がプロンプトに収めきれない
  • コスパを高めたい

これらのパターンに該当する場合、積極的な導入を検討してはいかがでしょうか。投資対効果が高くなる可能性が高いため、おすすめです。

正確な知識を与えたい

専門性の高い領域では、通常のChatGPTが適切な意味理解ができない場面が頻繁に発生します。このような課題に対しては、専門書や技術文書を活用したデータセットを準備し、ファインチューニングを実施することがおすすめです。

また、ChatGPTには不明確な情報の出力を制限する仕組みが備わっているため、必要な情報が得られないケースも多く発生します。ファインチューニングを通じて正確な知識を学習させることでより確実な情報提供が可能となるため、医療や法律など、高い専門性が求められる分野での活用が効果的です。

情報をアップデートしたい

法律の改正など、システム全体に影響を及ぼす重要な変更が発生した場合、ファインチューニングが効果的です。これは表面的な情報の更新ではなく、モデルの根本的な前提条件を最新の状態に反映させる必要がある場合に特に有効となります。

ただし、単純な情報の更新であれば、RAG(Retrieval Augmented Generation)による対応で十分なケースもあります。アップデートの性質を見極めて、適切なアプローチを選択していきましょう。コストと効果を考慮し、最適な手法を検討することが重要です。

出力の形式を統一したい

ChatGPTは会話形式での出力を基本としているため、不要な前置きが付いてしまう傾向があります。翻訳タスクでも「以下は日本語に翻訳した記事になります」といった余分な文章が出力されるのです。

また、専門的な内容では「私は弁護士ではないので」といった断り書きが頻出します。特にアプリケーションへの組み込みやJSON形式での出力時には、これらの前置きがエラーの原因となるため、ファインチューニングによる出力形式の統一が効果的です。

指示内容がプロンプトに収めきれない

詳細なプロンプトと長い文章を扱う場合、トークンサイズの上限に達してしまうことがあります。より上限の高いモデルを選択する方法もありますが、プロンプトの中間部分が無視される傾向があるため、単純なサイズ引き上げでは解決できないことがあるためです。

このような場合、ファインチューニングにより詳細な指示内容をモデルのパラメータに直接組み込むことが効果的となっていきます。また、トークンサイズが大きくなるほど従量課金の費用も増加するため、プロンプトを短縮できる手法として注目を集めているのです。

コスパを高めたい

GPT-3.5のファインチューニング済みモデルは、GPT-4と比較して大幅にコストを抑えることが可能です。入出力のトークン単価が約3分の1(入力0.012ドル、出力0.016ドル)となっています。

また、詳細な指示をモデルのパラメータに組み込むことで、プロンプトを短縮できます。例えば翻訳タスクでも、細かい指示なしで望む出力が得られるようになります。この二重のコスト削減効果により、長期的な運用コストを大幅に低減できるのです。

ChatGPTのファインチューニング活用事例4選

多くの企業がファインチューニングを活用し、業務効率の向上を実現しています。導入事例は業界を問わず増加傾向にあるようです。ここでは、特に成果を上げている以下の事例を詳しく解説していきます。

ChatGPTのファインチューニング活用事例4選
  • サービス・製品の情報を追加してチャットボットの精度向上
  • 音声カスタマイズで動画制作を効率化
  • 業界知識を記憶させて専門性の高いコンテンツを自動制作
  • 社内情報の検索システム構築で共有を円滑化

これらの事例は、様々な業種や規模の企業で応用が可能です。実際の導入効果も確認されており、多くの企業で検討されています。自社での活用を考える際の参考としてください。

サービス・製品の情報を追加してチャットボットの精度向上

生成AIに社内独自の情報を学習させることで、より精度の高いカスタマーサポートが実現できます。

従来のチャットボットでは一般的な質問には対応できても、製品やサービスの詳細情報については回答できない場合がありました。しかし、ファインチューニングにより自社独自の情報を追加することで、具体的な仕様や利用方法まで正確に回答できるようになっていきます。顧客満足度の向上にも大きく貢献するでしょう。

音声カスタマイズで動画制作を効率化

生成AIに様々なタイプの声や口調のデータを学習させることで、特定の人物の声を再現した音声を出力できるようになります。この技術は動画コンテンツのナレーションや音声チャットボットなど、幅広い場面での活用が可能です。

特に動画制作の現場では、ナレーション収録の工程を大幅に効率化していくでしょう。また、企業の特徴的なトーンや話し方を学習させることで、ブランドイメージに合致した音声を生成することができます。修正が必要な場合も、テキストの編集だけで対応が可能となるため、再収録の手間やコストを削減でき、品質と効率の両立が可能です。

業界知識を記憶させて専門性の高いコンテンツを自動制作

専門的な業界情報や技術知識を学習させることで、高品質なコンテンツ制作が可能です。例えば医療や金融分野では、専門用語を正確に理解し、適切に使用できるようになります。

また、各業界の法令や最新の規制情報も反映させることが可能です。これにより、専門家による確認作業の工数を削減しながら、信頼性の高いコンテンツを効率的に生成できるようになっていきます。専門分野ならではの表現や業界特有の文体にも対応可能となるため、より自然な文章を作成できるでしょう。

社内情報の検索システム構築で共有を円滑化

生成AIに自社のマニュアルや顧客情報などのデータを学習させることで、社内専用の検索システムを構築できます。これにより、膨大なマニュアルを一つずつ確認する必要がなくなり、必要な情報に素早くアクセスできるようになるでしょう。新入社員の教育支援ツールとしても効果を発揮します。

また、部署間での情報共有が円滑になり、業務効率の改善にもつながるでしょう。具体的な業務ノウハウも共有しやすくなるため、組織全体の生産性向上も見込めるかもしれません。従来は属人化していた知識を組織の資産として活用できるようになり、リモートワーク環境下での情報アクセシビリティの向上にも寄与します。

ChatGPTのファインチューニングの注意点

ファインチューニングには様々なメリットがありますが、いくつかの注意点も存在します。

ChatGPTのファインチューニングの注意点
  • 習得可能な知識には限界がある
  • 回答精度自体はさほど変わらない

この2点に注意が必要です。導入を検討する際は、これらの制限事項を十分に理解しておくことが重要になります。適切な期待値を設定し、計画的な導入を進めていきましょう。

習得可能な知識には限界がある

ChatGPTのファインチューニングでは、特定のデータセットに基づく学習は可能ですが、新たな知識の獲得には大きな制限があります。実用レベルのLLMは10GB以上のモデルデータを持っているため、追加の学習データはベースモデルの影響を強く受けるからです。

例えば、自社ルールや独自のビジネスプロセスを完全に理解させることは難しく、期待通りの出力を得られないことが多いでしょう。既存の知識の範囲内での調整が現実的な目標となりますが、その範囲内であれば、より正確で一貫性のある回答ができるようになっていきます。

回答精度自体はさほど変わらない

ファインチューニングによって、ChatGPTが特定分野の専門家のように回答してくれることを期待する方も多いようです。しかし、実際の回答精度は劇的には向上しないといえます。特定の表現や話し方のものまねはできますが、ベースとなるモデルの影響が強く残るため、専門的な判断を必要とする出力は難しいでしょう。

とはいえ、ファインチューニングをすれば特定の用途に向けた調整は十分可能です。できる範囲を理解した上で活用していきましょう。

ChatGPTのファインチューニングで自分好みにAIをアレンジ

ファインチューニングは、業務特性や利用目的に応じたカスタマイズが可能になり、特定の目的に合わせて効果的に調整できるツールです。ファインチューニングを活用することで、自分や組織のニーズに合わせたAIモデルを作成できます。

【ChatGPTのファインチューニングがおすすめのパターン】

  • 正確な知識を与えたい
  • 情報をアップデートしたい
  • 出力の形式を統一したい
  • 指示内容がプロンプトに収めきれない
  • コスパを高めたい

メリットやデメリット、コストと効果のバランスを考慮しながら、段階的に導入を進めていきましょう。また、活用事例などを理解した上で利用することで、業務効率の向上に大きく貢献できるはずです。

目次