近年、ビジネスのあらゆる場面でAI(人工知能)の活用が進み、「AI人材」の重要性が高まっています。
しかし、以下のような疑問を持つ方も多いでしょう。
「AI人材とは具体的にどのような人材なのか」
「どんなスキルが必要なのか」
この記事では、AI人材の基本定義から求められるスキル、主な職種と年収、未経験からの目指し方、そして将来性まで解説します。
AIの仕事に従事したい方は、以下の点を理解できます。
【記事を読んで得られること】
- AI人材の定義
- AI人材に求められるスキル
- AI人材の職種と年収
AI人材不要論にも触れるので、キャリアに迷っている方は参考にしてください。
AI人材とは?注目される背景と基本定義

AI技術の急速な発展にともない、AI人材への注目度はますます高まっています。
- AI人材とは?
- AI人材の定義
- AI人材の種類
- IT人材やDX人材との違い
AI人材という言葉を初めて聞いた方に向けて、それぞれの定義を解説します。
AI人材とは?
AI人材とは、AI(人工知能)に関する専門知識やスキルを持ち、AI技術を社会やビジネスの課題解決、新たな価値創出に活かせる人材のことです。
単にAIのプログラムを書けるだけでなく、AIを使って実現したいことを考え、企画し、開発・導入・運用までを担える能力が求められます。
AI活用は画像認識、自然言語処理、予測分析など多岐にわたる技術分野を含むため、それらを理解し、適切に活用する力が必要です。
ビジネスの現場では、AIを導入することで業務効率化や生産性向上、新サービスの開発などが期待されており、その実現に貢献するのがAI人材の役割となります。
AI人材の定義
AI人材の明確な定義は一概には言えませんが、一般的には次のような人材を指します。
- AI技術の研究開発
- AIシステムの設計・実装
- AIを活用したデータ分析
- AIプロジェクトの企画・推進
経済産業省の資料では、AIに関する深い知識(機械学習、深層学習など)に加え、データを扱うための数学・統計学の知識、プログラミングスキル、ビジネス課題を理解し解決策を提案する能力を持つ人材として定義されています。
AIの可能性を最大限に引き出し、ビジネスや社会の変革をリードする存在として、その定義は技術の進展とともに変化し続けています。
AI人材の種類
AI人材はその役割や専門性によって、以下のように分類できます。
- AIエンジニア(機械学習エンジニア)
- データサイエンティスト(データアナリスト)
- AIプランナー(プロダクトマネージャー)
上記は独立しているわけではなく、互いに連携しながらプロジェクトを進めることが多い職種です。
興味や強みに合わせて、目指すAI人材像を具体化してみましょう。
IT人材やDX人材との違い
AI人材と混同されやすい言葉に「IT人材」と「DX人材」があります。
IT人材は、情報技術全般に関するスキルを持ち、主にシステムの開発、運用、保守などを担う人材です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)人材は、デジタル技術を活用して企業のビジネスモデルや業務プロセスを変革し、競争優位性を確立する役割を担います。
AI人材は、それぞれの分野のなかでもAI技術に特化した専門知識・スキルを持つ人材を指します。
AIはDXを推進する上で重要な技術要素となり、ITスキルもAI開発の基盤となるため、それぞれが完全に独立しているわけではなく、重なり合う部分も多いのが特徴です。
日本におけるAI人材不足の現状と課題

AI技術の活用が急速に進む一方で、それを担うAI人材の不足は日本社会の課題となっています。
- 日本のAI人材不足は深刻?
- なぜAI人材は不足しているのか?
- AI人材不足がビジネスに与える影響
- AI人材不足の解決策
社会全体でAI活用を進める上で、人材不足という壁をどのように乗り越えていくべきか考察します。
日本のAI人材不足は深刻?
日本のAI人材不足は、多くの調査報告で指摘されており、深刻な状況と言えます。
経済産業省の調査によると、AIを含む先端IT人材は将来的に大幅に不足すると予測されています。
特に、高度な専門知識を持つAIエンジニアやデータサイエンティストの人材不足が深刻です。
企業のAI導入意欲は高まっているものの、それを実現できる人AI材が社内に不足しているため、プロジェクトが進まなかったり海外企業に比べてAI活用が遅れたりするケースが見られています。
AI人材不足は、日本の産業競争力を維持・向上させる上で大きなボトルネックになっています。
なぜAI人材は不足しているのか?
AI人材が不足している背景には、複数の要因が絡み合っています。
第一に、AI技術の急速な進化と社会実装のスピードに、人材育成が追いついていないことです。
AI分野は高度な専門知識(数学、統計学、プログラミング、機械学習理論など)が要求されるため、育成に時間がかかります。
第二に、大学などの高等教育機関におけるAI専門教育プログラムが不十分なことや、実践的なスキルを学べる環境が限られていることも一因です。
さらに、AIプロジェクトをリードできるビジネススキルを兼ね備えた人材は希少で、企業間での獲得競争が激化しています。
AI人材不足がビジネスに与える影響
AI人材の不足は、個々の企業の成長だけでなく、日本経済全体にも悪影響を及ぼす可能性があります。
まず、AIを活用した業務効率化や生産性向上の機会を逃し、コスト削減や競争力強化が進まなくなります。
また、AIを用いた革新的な製品やサービスの開発が遅れ、新たな市場を開拓するチャンスを失うかもしれません。
さらに、データに基づく的確な経営判断が難しくなり、経営リスクが増大するおそれもあります。
AI人材不足が続くと先行する海外企業との差がますます広がり、日本の産業全体の地盤沈下につながる懸念もあります。
AI人材不足の解決策
AI人材不足を解消するためには、多角的なアプローチが欠かせません。
企業は社内でのAI人材育成プログラムを強化し、既存社員のリスキリング(学び直し)を積極的に支援する必要があります。
外部研修の活用やOJT(On-the-Job Training)を通じて、実践的なスキル習得の機会を提供します。
次に、大学や専門学校などの教育機関と連携し、社会のニーズに合ったAI教育カリキュラムを開発・提供することも重要です。
さらに、潜在的なAI人材を発掘し、育成する仕組みづくりも求められます。
フリーランスや副業人材の活用、海外からの高度人材の受け入れなども有効です。
政府、企業、教育機関が一体となって、継続的なAI人材の育成・確保に取り組む必要があります。
AI人材に求められるスキル・知識

AI人材として活躍するためには、以下のようなスキルが求められます。
- 技術スキル
- ビジネススキル
- その他スキル
それぞれのスキルで必要な要素を順番に解説します。
AI人材に求められる技術スキル
AI人材の中核となるのが、Pythonの習得です。
Numpy、Pandas、Scikit-learn、TensorFlow、PyTorchなどの機械学習・深層学習ライブラリやフレームワークを使いこなす能力も必要です。
また、大量のデータを扱うため、データベース(SQLなど)やデータ処理基盤に関する知識も欠かせません。
加えて、AIモデルの学習や運用にはクラウドプラットフォーム(AWS, Azure, GCPなど)の知識が役立ちます。
さらに、AIアルゴリズムの根幹をなす数学(線形代数、微分積分)や統計学の基礎知識は、モデルの理解や改善に必要です。
AI人材に求められるビジネススキル
AI技術を実際のビジネス課題解決に結びつけるためには、技術スキルだけではなく、ビジネススキルも必要です。
まず、現状を分析し、AIで解決すべき本質的な課題を発見・設定する能力が求められます。
次に、エンジニア、企画担当者、経営層など、さまざまな立場の人と円滑にコミュニケーションを取り、プロジェクトを推進する能力も求められます。
特に、技術的な内容を専門知識のない相手にも分かりやすく説明する力が重要です。
また、プロジェクトを計画通りに進めるためのマネジメントスキルや、担当する業界や業務に関する深い知識も、AI活用には欠かせません。
AI人材に求められるその他スキル
技術スキル、ビジネススキルに加えて、常に最新の論文や技術動向を追いかけ、学習し続ける探求心と自己学習能力が必要です。
また、AIは社会に大きな影響を与える可能性があるため、データプライバシーやアルゴリズムの公平性などに対する高い倫理観も欠かせません。
複雑な課題を整理し、論理的に解決策を導く力も重要です。
さらに、最新の研究論文や技術文書の多くは英語で書かれているため、一定の英語力(特に読解力)があると、より多くの情報にアクセスできます。
AI人材の主な職種と気になる年収相場

AI人材と一口に言っても役割や専門分野によってさまざまで、以下のような職種が存在します。
- AIエンジニア(機械学習エンジニア)
- データサイエンティスト(データアナリスト)
- AIプランナー(プロダクトマネージャー)
上記の職種で求められるスキルや仕事内容、そして年収相場を紹介します。
AIエンジニア(機械学習エンジニア)の仕事内容と年収
AIエンジニアや機械学習エンジニアは、AIアルゴリズムや機械学習モデルを実際にシステムに組み込み、開発・実装・運用する役割を担います。
AIエンジニアにはPythonなどのプログラミングスキルはもちろん、ソフトウェア開発全般の知識、クラウド環境での開発経験などが求められます。
2025年4月時点の求人ボックスのデータでは平均年収が約543万円で、経験豊富なAIエンジニアは年収1,000万円を超えることも珍しくありません。
国税庁が発表した2024年の日本の平均年収が460万円だったため、AIエンジニアの年収は高収入と言えます。
AI の知識に加えてプログラミングや開発の経験など、高度なスキルを求められますが、年収を上げたいと考えている方におすすめの職種です。
データサイエンティスト(データアナリスト)の仕事内容と年収
データサイエンティストやデータアナリストは、企業などが保有する大量のデータを分析し、ビジネス上の課題解決につながる知見や洞察を抽出する専門職です。
統計学や機械学習の手法を用いてデータから傾向を見いだし、将来の予測や意思決定の支援を行います。
データ分析スキルに加え、ビジネス課題を深く理解する能力や、分析結果を分かりやすく伝えるコミュニケーション能力が重要です。
データサイエンティストの平均年収は約614万円で、AIエンジニアよりも高めに設定されています。
データアナリストも専門性が高く、経験を積むことで高年収が期待できる職種です。
AIプランナー(プロダクトマネージャー)の仕事内容と年収
AIプランナーやAIプロダクトマネージャーは、AI技術をどのように活用すればビジネス価値を最大化できるかを考え、具体的なサービスやプロダクトの企画・立案・推進を行う役割です。
市場のニーズや技術動向を把握し、AIを活用した新しいビジネスモデルや機能改善を考案します。
AIエンジニアやデータサイエンティストと連携し、プロジェクト全体の方向性を決定し、開発全般をマネジメントします。
技術的な知識もある程度必要ですが、それ以上にビジネス視点やマーケティング知識、プロジェクト推進力が重視される職種です。
年収は担当するプロダクトの規模や企業の業績にも左右されますが、平均年収で約554万円、作業を一人でこなせるスキルを持つと800万円を超えてきます。
未経験からAI人材になるには?育成・学習ロードマップ

適切なステップを踏めば、未経験からでもAI人材を目指すことは可能です。
独学の可能性、企業の育成取り組み、資格の有効性、そして実務経験の積み方を解説します。
AIは独学で学べる?
AI技術の基礎は、独学でもある程度学ぶことが可能です。現在では、CourseraやUdemyなどのオンライン学習プラットフォームで質の高いAI関連講座が多数提供されています。
また、専門書籍も豊富に出版されており、Pythonプログラミング、数学・統計学の基礎、機械学習の入門知識などを自分のペースで学習できます。
ただし、独学だけでは体系的な知識の習得や実践的な応用力を身につけるのが難しいと感じる方もいるでしょう。
そんな方は、講師とマンツーマンで学習できるスクールもおすすめです。
初めてAIに触れる方には、業務でも幅広く使われているChatGPTの基礎から応用までを体系的に学べる「ChatGPT道場」がおすすめです。
ChatGPT道場の詳細は、以下のページから確認してください。

企業におけるAI人材育成の取り組み
多くの企業がAI人材の確保・育成を重要な経営課題と捉え、以下のような取り組みを進めています。
- 社内研修プログラムの実施
- 外部の専門研修への参加推奨
- 資格取得費用の補助
一部の企業では、AI専門部署を設立したり外部のAIセミナーを導入したりと、社内のAI人材育成に力を入れています。
転職市場でもポテンシャル採用として未経験者を受け入れるケースが増えているため、AI人材として転職したい方はポテンシャル採用を活用してみましょう。
AI人材に資格取得は有効?
AI関連の資格取得は、スキルレベルを客観的に証明したり体系的な知識を習得したりする上で有効な手段です。
代表的な資格としては、AIの基礎知識を問う「G検定(ジェネラリスト検定)」や、AI実装能力とスキルを問う「E資格(エンジニア資格)」などがあります。
また、Python関連のプログラミング資格や、AWS、Azure、GCPなどのクラウドプラットフォームの認定資格も、AI開発の実務において役立ちます。
ただし、資格を持っているだけで即戦力と見なされるわけではありません。
資格取得はあくまで知識習得の手段やきっかけととらえ、実際の開発経験やポートフォリオ(成果物)を増やしていくことが大切です。
実務経験の重要性と積み方
AI人材として市場価値を高めるためには、実務経験が欠かせません。
学習した知識やスキルを実際の課題解決に応用した経験は、AI人材を求める企業から高く評価されます。
未経験から実務経験を積む方法としては、まず学習内容を活かしたポートフォリオを作成し、スキルを可視化することが有効です。
現在の職場でAI関連プロジェクトに関わるチャンスがあれば、積極的に手を挙げましょう。
社内に機会がない場合は、AI技術を活用している企業への転職や、インターンシップへの参加もおすすめです。
最初はアシスタント的な役割だとしても、実務に触れる機会を得ることが何よりも大切です。
AI人材はいらない?AI時代のキャリアと将来性

ビジネスの現場では、「AI人材もいずれ不要になるのでは?」との声も聞かれます。
- なぜ「AI人材はいらない」と言われるのか?
- AI技術の進化と人間の役割の変化
- AI人材の将来性
AI人材を目指している方のために、上記の項目を解説します。
なぜ「AI人材はいらない」と言われるのか?
AI人材はいらないという意見が出る背景には、いくつかの理由が考えられます。
一つは、AI技術そのものの進化によって、専門家が行っていたデータ分析やモデル構築作業の一部がAIツールで自動化・簡略化されつつあることです。
また、AI開発のフレームワークやライブラリが整備され、開発のハードルが下がっていることも一因です。
さらに、一部の単純なAI関連業務は、将来的により高性能なAI自身によって代替される可能性も指摘されています。
AIが自発的に業務をこなせるようになると、AI人材も不要になるとの憶測があります。
AI技術の進化と人間の役割の変化
AI技術の進化は目覚ましく、定型的な作業や特定のパターンの認識・予測などの単純タスクは、人間よりもAIの方が正確にこなせるようになっています。
しかし、人間の仕事が完全になくなるわけではありません。
AIが単純作業やデータ処理を肩代わりしてくれることで、人間はよりクリエイティブな仕事や複雑な問題解決、対面営業など、AIには難しい領域に注力できるようになります。
AIを使いこなす能力、AIが出した結果をビジネスに活かす能力が、今後ますます重要になるでしょう。
AI人材の将来性
AI人材の将来性は明るいと考えています。
AI技術は今後も発展を続け、あらゆる産業・分野での活用がさらに拡大していくと予想されているためです。
それにともない、AIを理解し、開発・導入・活用できる人材への需要はますます高まるでしょう。
ただし、「AI人材」に求められるスキルセットは、技術の進化とともに変化していく可能性があります。
単に特定のツールを使うだけではなく、常に最新技術を学び続け、変化に対応していく柔軟性が欠かせません。
ビジネス課題の本質を見抜き、AIを効果的に活用して価値を創出できるAI人材は、長期的に社会から求められ続ける存在となるでしょう。
スキルを身につけて市場価値の高いAI人材を目指そう!

AI人材は、現代社会のデジタル化を推進し、業務を効率化していく上で欠かせない存在です。
AI人材の需要は今後も高まり続けると予想され、将来性もあります。
AI人材になるためには、プログラミングや数学などの技術スキルだけでなく、ビジネス課題の解決能力やコミュニケーション能力、そして常に学び続ける学習意欲が必要です。
未経験からでも、オンライン学習や資格取得、実務経験を通じて着実にスキルを身につけ、AI人材への道を開くことは可能です。
【AI人材になるメリット】
- 高収入が期待できる
- 転職で有利になる
- 最新技術に触れられる
「AIはいらない」という声に惑わされず、AIと協働し、人間ならではの価値を発揮できる人材を目指しましょう。
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