ChatGPTのオプトアウト機能は、AIに学習「させたくない」ときに重宝されます。オプトアウト機能にはAIの学習内容をコントロールしたり、情報漏洩を防ぐといった役割がありますが、以下のような悩みを持つ方も少なくありません。
「ChatGPTでオプトアウトを設定する方法は?」
「オプトアウトは本当に安全なの?」
今回は、そんなChatGPTのオプトアウト機能の具体的な設定手順を解説します。
【記事を読んで得られること】
- ChatGPTのオプトアウト機能の設定方法
- ChatGPTのオプトアウト機能のメリット・デメリット
- ChatGPTのオプトアウト機能を活用すべきシチュエーション
ChatGPTのオプトアウト機能を活用するメリットやデメリット、具体的に活用すべきシーンについても必ず目を通しておきましょう。
ChatGPTのオプトアウト機能とは?
ChatGPTのオプトアウト機能について、事前に知っておくべき以下の要素を解説します。
- そもそもオプトアウトとは?
- ChatGPTはオプトインで入力データを学習する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
そもそもオプトアウトとは?
オプトアウト(opt-out)とは、特定の機能やデータ収集から「除外される内容」を選択する仕組みを指す専門用語です。
ChatGPTの入力欄ではなく、専用画面から設定することでChatGPTに学習「させない」「しないでほしい」内容を決めることができます。
ChatGPTの場合、オプトアウト機能を利用すれば入力したデータがAIモデルの学習や改善に使用されなくなるため、個人情報や機密情報を無断で利用されたくない場合は特に重宝するでしょう。
ChatGPTはオプトインで入力データを学習する
ChatGPTには、サービス向上のために頻繁に入力される質問やパターンを学習し、回答の精度を高める仕組みが搭載されています。これは「オプトイン」と呼ばれており、ユーザーによって入力されたデータが保存され、今後の回答生成における参考情報として活用されるケースがあります。
人間が無意識に入力した情報を生成AIが拾ってしまい、別のユーザーへの回答生成時に意図せず参照してしまう、といった事象にもつながるので、企業単位で利用を検討している場合は最大限注意してください。
ChatGPTのオプトアウト機能を設定する手順
ChatGPTのオプトアウト機能を設定する手順について、パターンごとにそれぞれ解説します。
- PC・スマホアプリでオプトアウト機能を設定する手順
- 専用フォームからオプトアウト機能を設定する手順
セキュリティ性を高めたい方は、導入前に押さえておいてください。
PC・スマホアプリでオプトアウト機能を設定する手順
PCやスマホアプリでChatGPTのオプトアウト機能を設定する手順は以下のとおりです。
- ChatGPTへアクセスしてログインする
- 「設定(Settings)」をクリックする
- 「データコントロール(Data Controls)」を開く
- 学習機能をオフにする
それぞれの手順をチェックし、参考にしながら設定を進めていきましょう。
ChatGPTへアクセスしてログインする
まず、ChatGPTの公式サイトまたはスマホアプリからアカウントにログインしましょう。
ChatGPTのアカウントがまだない方は、公式サイトの「サインアップ」ボタンをクリックして登録を進めてください。
ログイン情報は、GoogleやMicrosoft、Appleのアカウントで設定可能です。
アカウント登録が完了し、ログインすると管理画面にアクセスできるようになります。
セキュリティを確保するため、ログイン情報を他人と共有しないようにしましょう。
「設定(Settings)」をクリックする
ログイン後、画面右上にあるプロフィールアイコンをクリックするとメニューが表示されるので、その中から「設定(Settings)」を選択しましょう。
設定画面では、アカウント情報やデータの取り扱いに関する項目の確認・変更も行えるので、今後のためにも押さえておいた方が良いかなと思います。
「データコントロール(Data Controls)」を開く
「設定(Settings)」を選択したら、次は設定画面内にある「データコントロール(Data Controls)」の項目をクリックしましょう。この項目では、ChatGPTが「どのようにデータを管理し、利用するか」といった条件を設定できます。
もし「データコントロール(Data Controls)」の項目が表示されない場合は、アプリやウェブサイトのバージョンを確認し、最新バージョンにアップデートしてください。
学習機能をオフにする
「データコントロール」内に表示される「すべての人のためにモデルを改善する」という項目をオフにしましょう。これでオプトアウトがアクティブになり、入力データがChatGPTの学習に使用されなくなります。
なお、設定変更後は、必ず「実行する」をクリックして変更を確定してください。
専用フォームからオプトアウト機能を設定する手順
次は、専用フォームからオプトアウト機能を設定する手順を解説します。
- 「Make a Privacy Request」をクリックする
- 利用端末を選択する
- 「Do not train on my content」をクリックする
- メールアドレスを入力して送信する
- 「Confirm Request」をクリックする
それぞれ詳しく見ていきましょう。
「Make a Privacy Request」をクリックする
まずはOpenAIの公式サイトにアクセスし、「OpenAI Privacy Request Portal」の右上にある「Make a Privacy Request」というボタンをクリックしましょう。
ボタンをクリックすると、専用フォームに移行するはずです。
利用端末を選択する
専用フォームが表示されたら、利用端末に合わせて選択肢をクリックします。
スマホの場合は「Consumer(phone verification)」、パソコンでアクセスするとアカウント自体を持っているかを問われるので、事実の通りに選べば問題ありません。なお、以下はパソコンでの選択肢となります。
「Consumer(phone verification)」では電話番号による認証が求められる場合があるので、登録済みの電話番号を用意しておいてください。
「Do not train on my content」をクリックする
次は「Do not train on my content」を選択しましょう。
これでChatGPTに入力したデータがモデルの学習プロセスに利用されないよう設定できます。
メールアドレスを入力して送信する
「Do not train on my content」の設定が完了したら、自分のメールアドレスを入力してフォームを送信しましょう。
登録済みのメールアドレスを正確に入力し、「Send Email」ボタンをクリックすればこの手順は完了となります。
OpenAIから届いたメールにログインする
フォーム送信後、OpenAIから確認用のメールが届くはずです。そして、OpenAIから届くメールには、リクエストを確定するためのリンクが記載されています。
なお、メールに記載されているリンクをクリックする前に、送信元が正規のアドレスであることを確認しましょう。OpenAIの名を騙ったサービスが多いので、その点からも注意が必要なためです。
「Confirm Request」をクリックする
メール内のリンクをクリックすると、確認ページが表示されます。ページ内にある「Confirm Request」ボタンをクリックすれば、オプトアウト機能の設定は完了となります。
ここまで難しい手順はあまり発生しないので、初心者でもスムーズに設定できるはずです。
ChatGPTのオプトアウト機能を活用するメリット
ChatGPTのオプトアウト機能を活用するメリットは、以下のとおりです。
- AIへ学習させる内容をコントロールできる
- 情報漏洩のリスクを軽減できる
- 回答の精度を維持しやすい
それぞれのメリットを押さえたうえで、ChatGPTを業務に活かしていきましょう。
AIへ学習させる内容をコントロールできる
オプトアウト機能を活用すれば、生成AIに学習させるデータの内容をユーザー自身でコントロールできます。実際のところ、企業がChatGPTを使う場合、機密情報や顧客データといった重要な内容を入力するケースも多いでしょう。
そこでオプトアウトを利用すれば、新製品の企画書や顧客リストのような機密性の高いデータを自社のネットワークだけで完結させられます。もちろん別のGPTユーザーへの生成結果には表示されません。
自社のセキュリティを高めるうえでも重宝するので、積極的に導入するのがおすすめです。
情報漏洩のリスクを軽減できる
ChatGPTのオプトアウト機能は、情報漏洩リスクを軽減するうえでも欠かせません。
オプトインがアクティブになっている限り、生成AIが学習・保存したデータが外部に流出する可能性を完全にゼロ化するのは極めて困難です。しかし、オプトアウトを使えば少なくとも入力データが保存されるリスクはなくせます。
ただし、企業単位などの不特定多数でGPTを使う場合、その社員自体のリテラシー教育も必要になってきます。誤ってオプトインを解除するような事態に発展しないよう、マニュアルなどを作成しておくと良いでしょう。
回答の精度を維持しやすい
オプトアウト機能には、ChatGPTによる回答精度を維持しやすくなるメリットもあります。
特にコンサルタントやライターといった様々な業界に関するノウハウを頻繁に調べる場合、オプトインによって学習した情報を差し込まれると情報の方向性・精度にブレが生じるケースが少なくないのです。
しかし、オプトアウト機能を使ってChatGPTの学習プロセスを制限することで、不要な情報を蓄積させず回答の一貫性を保ちやすくなるでしょう。
ChatGPTのオプトアウト機能のデメリット
ChatGPTのオプトアウト機能には、以下のようなデメリットもあります。
- 回答精度の向上が期待できなくなる
- 過去の会話履歴が削除されてしまう
- 情報漏えいのリスクが完全には排除されない
それぞれの対処法も掲載しているので、ぜひ参考にしてください。
回答精度の向上が期待できなくなる
オプトアウト機能は回答の品質を保持できる反面、それ以上の精度向上が見込めなくなるデメリットがあります。
頻繁に使用する専門用語や独自表現をAIに学習させる際、オプトインさせれば個別に最適化された回答を得られますが、オプトアウトはその学習プロセス自体が失われるからです。
セキュリティ向上につながる一方、特定の業界や専門分野で利用する際、期待通りの回答が得られにくくなるリスクがあることも知っておきましょう。
過去の会話履歴が削除されてしまう
オプトアウト機能をオンにすると、ChatGPTは会話履歴を保存しなくなります。過去のやり取りを確認する方法がなくなるため、場合によっては不便に感じることもあるでしょう。
特に長期プロジェクトなどでChatGPTを利用している際、前回の会話内容を参照できなくなり、同じ情報を何度も入力する手間が発生します。
また、作業履歴をこまめに確認しながら進めるタイプの業務を行う時も同様、効率が低下するかもしれません。
そのため、もしオプトアウト機能を使いつつ会話履歴も残したいなら、重要なやり取りを手動で記録したり、スマホやPCのメモ帳に記録したりといった工夫を行いましょう。
履歴保存が必要な場面になったとき、オプトアウトを一時的に無効にするのもおすすめです。
情報漏えいのリスクが完全には排除されない
オプトアウト機能を使えばChatGPTに学習されることは防げるものの、情報漏洩のリスクが完全に排除されるわけではありません。
セキュリティ事故や第三者による不正アクセスが発生した場合、オプトアウト機能の設定状況に関わらず、ユーザーによって入力されたデータが外部に流出する可能性があります。
APIや外部ツールを通じてChatGPTを利用しているなら、ツールのセキュリティ対策における抜けが情報漏洩の原因になるリスクも否定できません。
さらに、人間のミスが原因でオプトアウト設定が正しく反映されないケースも考えられるでしょう。
そのため、情報漏洩リスクを抑えるにはまずオプトアウト機能を過信せず、セキュリティ強化とデータ管理のポリシーも作り込んでください。
ChatGPTのオプトアウト機能を使うべきシチュエーション
ChatGPTのオプトアウト機能を使うべきシチュエーションは、以下があげられます。
- 機密情報・未公開情報を含む質問を行うとき
- 一時的に特定分野における内容や回答の方向性を学習させたいとき
- 他のAIと出力内容の精度を比較するとき
それぞれのシチュエーションにおける具体例もチェックし、自社の業務に役立ててください。
機密情報・未公開情報を含む質問を行うとき
機密性の高い情報や一般未公開のデータを含む質問を行う際は、オプトアウト機能を利用するべきです。具体的には以下があげられるでしょう。
- 新商品・新製品のリリース準備
- 未公開プロジェクトに関する業務
- 競合分析における自社コンテンツの分析 など
実際のところ、ChatGPTが自社の未公開データを生成結果に表示したからといって、企業まで特定される可能性は低いです。しかし、独自性の高いサービスなどはアイデア自体を盗まれるリスクがあるので、オプトアウトで徹底的に管理するのがおすすめと言えます。
一時的に特定分野における内容や回答の方向性を学習させたいとき
一時的に特定分野の回答が必要な場合、オプトアウト機能を利用することで、過去の会話履歴や他のデータからの影響を防げるようになります。
それを踏まえ、以下の状況に当てはまる作業を行うときは積極的に活用すると良いでしょう。
- 顧客ごとの企業の詳細を分析するとき
- 単発案件における作業を行うとき
- 業務とは関係ない用途で一時的にChatGPTを使うとき など
他の分野におけるデータを混在させず、精度を保った回答が得られるので、事前に一定の基準を設けてオプトアウトを切り替えるのがおすすめです。
他のAIと出力内容の精度を比較するとき
オプトアウト機能は、複数のAIツールを比較検討する場合にもおすすめ。実際に、生成AIの世界にはChatGPT以外にも以下のような人気ツールが存在します。
- Gemini
- Claude
- Copilot など
ただ、ChatGPTと他の生成AIに同じ質問をして精度を比較する際、過去に学習したデータによって情報にバラつきが生まれ、公平に比較できなくなる可能性があるのです。
そこでオプトアウト機能を設定すれば、ChatGPTが既存データに依存しない状態となるため、ツールそのものの精度や挙動を評価しやすくなるでしょう。
ChatGPTのオプトアウト機能に関してよくある質問
最後に、ChatGPTのオプトアウト機能に関してよくある質問を解説します。
- オプトアウト機能以外にChatGPTに学習させない方法はある?
- ChatGPTは有料版と無料版でオプトアウトの方法は異なる?
- ブラウザ版のChatGPTで行った設定はスマホアプリ版にも同期される?
- OpenAIの従業員にユーザーの検索履歴を見られるリスクはある?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
オプトアウト機能以外にChatGPTに学習させない方法はある?
ChatGPTに入力内容を学習させないための方法は、オプトアウト機能以外にも以下があげられます。
- 入力内容に機密情報や個人情報を含めないようにする
- enterpriseプランを利用する
- API版のChatGPTを利用する
ChatGPTへの情報提供を防ぐには、まず入力内容に機密情報や個人情報を含めないようにするのが鉄則です。
また、上位プランであるenterpriseにはデフォルトでオプトアウトが設定されており、ChatGPTのAPIでも同様です。こちらは以下の記事でも詳しく解説しているので、必要に応じて使い分けると良いでしょう。
関連記事:ChatGPT APIとは?料金や使い方・注意点などを活用事例も交えて網羅的に解説
関連記事:ChatGPT Enterpriseとは?企業向けプランの料金や契約方法・TeamとPlusとの違いを解説
ChatGPTは有料版と無料版でオプトアウトの方法は異なる?
オプトアウトの設定方法は有料版(ChatGPT Plus)と無料版のいずれも変わりません。どちらからも先程の手順と同様に設定できます。
ただ、enterpriseプランはオプトアウトが標準設定になっているものの、データ収集ポリシーに関してより細かい内容が含まれるケースもあるので、注意しておきましょう。
ブラウザ版のChatGPTで行った設定はスマホアプリ版にも同期される?
ChatGPTで行ったオプトアウトの設定は、同じアカウントを使用している限り、ブラウザ版とスマホアプリ版の両方で同期されます。ブラウザ版でオプトアウトした場合、その変更がスマホアプリにも自動的に反映されるといった仕組みです。
しかし、ChatGPTのアプリが最新バージョンでない場合、変更が一時的に反映されないこともあります。
オプトアウト設定の反映漏れを防ぐためにも、ChatGPTのアプリを活用する場合は常に最新のバージョンにしておきましょう。スマホのアプリ自動アップデート機能を活用するのもおすすめです。
OpenAIの従業員にユーザーの検索履歴を見られるリスクはある?
OpenAIの従業員に、ユーザーの検索履歴を閲覧できる権限は与えられていません。
オプトアウト機能を活用しない場合、ChatGPTに入力した内容はOpenAI社へ提供されるものの、具体的な内容は厳重に管理されます。
少なくともOpenAIの従業員などが故意的に悪用する心配はないでしょう。
ChatGPTのオプトアウト機能でAIをコントロールしよう
この記事では、ChatGPTのオプトアウト機能の設定方法やメリット・デメリットに加えて、活用すべき具体的なシチュエーションについて解説しました。ChatGPTのオプトアウト機能を使うと、必要に応じて生成AIに学習させない仕組みを整えられます。
【ChatGPTのオプトアウトを活用できる場面】
- 機密情報・未公開情報を含む質問を行うとき
- 一時的に特定分野における内容や回答の方向性を学習させたいとき
- 他のAIと出力内容の精度を比較するとき
特に一般未公開の情報を入力する際は、情報漏洩以前にChatGPTによるデータ記録を防ぐオプトアウト機能を活用しましょう。
本記事で解説した設定手順を参考にしつつ、必要に応じてオプトアウト機能を使い、情報の機密性・作業の効率化を意識した業務体制を整えてみてください。